関西大学校友会: 2022年2月アーカイブ

2月7日に、第231回と同様に大阪新阪急ホテルの会場とZoomを利用したハイブリッド方式で開催。ゲストのほか、東京経済人倶楽部もリモートでご参加くださいました。糸野幹事の司会進行により開会、学歌斉唱、永尾会長の挨拶の後、来賓を代表して芝井敬司理事長、Zoomより田中義信校友会会長からご挨拶を、IDEC株式会社代表取締役の船木俊之様より、講演をいただきました。

■船木様の人生について
大学卒業後、高見沢サイバネティクスに就職、鉄道の自動券売機等の製造販売に携わられました。その後、仲間と自動販売機の会社を創業されるも事業は軌道にのらず、和泉電気（現IDEC）の創業者であったお父様からの提案で、和泉電気に入社。米国の合弁会社で3年間、修業されました。6か月間の英会話等の準備期間を経て渡米したものの、相手が何を話しているのか聞き取れず、孤独な生活のなか、ビジネスに打ち込む日々を過ごしました。2年後、パートナー企業との関係悪化により合弁会社を売却。現地日本人は帰国することになりましたが、船木様は米国に残り、電子リレーの販売会社を設立されます。緻密な営業戦略と、ニューヨークで汗だくになりながらの愚直な販売活動の成果もあり、事業を成功へと導かれました。現在、IDECの米国売上げは１億ドルに達しているとのことです。
1997年に、日本本社の社長に就任。日本を25年間離れていたこともあり、さまざまなカルチャーショックのなかで、大規模な社内改革に取り組まれます。代理店の再編、機種の統廃合、早期退職者の募集、ERSシステム導入による業務の一元管理などの大改革を行い、いまの成長へと繋げておられます。
2017年には、社内の公用語を英語にするという目標を掲げ、現在では取締役会は英語で運営。また、グローバル部門社員の大半は英語ができ、いち早く公用語化に成功されました。

・シリコンバレーがどのように誕生したのか
米国支社があるシリコンバレーについて、どのように生まれたのかをご紹介いただきました。その立役者はトランジスタ開発に成功したウィリアム・ショックレーと、その8人の部下と言われています。ショックレーはAT&Tの研究開発部門であるベル研究所に勤務。他の研究者と真空管に代わる個体を見つける研究を行い、1956年にノーベル物理学賞を受賞。その後「ショックレー半導体研究所」を設立したものの、1957年に8人の部下が独立、「フェアチャイルド・セミコンダクター」を設立します。一時的に成功するものの、失速。しかし、創業メンバーであったゴードン・ムーアとロバート・ノイスの2人が1968年にインテル社を創業するなど、元フェアチャイルド社員の多くが半導体企業を創設し、成功を収めます。現在ではナスダック上場ハイテク企業の70％はフェアチャイルド社の関係者で、それ以外では、8人が関わった企業は2000社以上にのぼると言われています。

・ナパ・ヴァレーについて
船木様はカルトワインにも精通されており、ナパ・ヴァレーについてのご紹介がありました。1980年頃に、ハーランドエステートのウィリアム・ハーレーが、世界初カルトワインのプライベートワインクラブ「ナパ・ヴァレー・リザーヴ」を運営するという情報をいち早く入手し、先着100名のチャーター会員となられます。年間270本のワインが作れる農園を保有し、収穫祭やワイン造りなど、1年中、イベントに参加されています。

・今後の日本への想い
グローバル市場における日本の状況において、大変危機感を覚えておられます。30年前の世界の時価総額ランキングでは上位20社の7割を日本企業が占めていましたが、現在では上位に日本企業はありません。その背景には「デジタルトランスフォーメーション（ＤＸ）」における成長格差があったと、捉えておられます。アップルやアマゾンはまさにＤＸにより世界のトップに立った代表例であり、日本企業は見習う必要が大いにあるとのことです。
2030年には日本の人口は1億1600万人に減少、労働人口も約640万人が不足すると予測されています。これをどのように補っていくかが重要課題となっており、解決方法として、以下の3点を挙げられました。
①女性の働きやすい環境づくり：女性の働きづらい国ランキング上位からの脱却
②外国人の永住を増やすための移民法改正：米国を見習い、単一民族から複合民族へ
③デジタルシフト：単純作業の自動化。DXの発展。
IDECも75周年を迎え、「ハードウェアの製造業からソフトウェア分野へ事業を拡大し、更なるHMIと安心・安全をシステムソリューションとして顧客に提供できる企業に進化させていきたい」「10年後、20年後のゴールを設定し、環境問題にも配慮するなかでDX推進を図っていきたい」とのこと。「皆さまと、明るい、楽しい日本にしていきたい」と締め括られ、本講演を終えられました。
最後に芋縄副会長から謝辞をいただき、米国からご参加いただいた船木様へお礼をして閉会となりました。次回は5月9日に開催予定です。

（平成28年経済学部卒　荻野真志）